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【伝統行事】三九郎の繭玉づくり

私達が暮らす長野県松本市には、「三九郎」という伝統行事があります。
正月明けの小正月の頃、木で組んだ大きなやぐらに、わらや正月飾りの松、だるまなどを積み上げて、無病息災を願ってお焚き上げをします。
「三九郎」というのは、この地方独特の呼び方で、他の地域では「どんど焼き」と呼ばれたりもします。やぐらの組み方なども、地域によって違うようです。

「三九郎」という名前の由来は諸説あり、はっきりしたことは分からないのですが、道祖神の祭りをする神主福間三九郎太夫の名を取った説、初代松本藩主であった石川数正の息子康長の幼名が「三九郎」であったことに由来する説、凶作・重税・疫病の三つの苦労=三苦労(三九郎)を払う為などといった説が有力だとか。

この三九郎では、やぐらを燃やした火が落ち着いた後に「繭玉」と呼ばれる、柳の枝に刺した団子を焼いて食べる風習があります。元々このような形のお餅は、養蚕の安全を願って作られていたそうなので、かつては養蚕が盛んだった松本らしい習慣ですね。

松本にUターンしてからは、娘とおばあちゃんと一緒に親子三代で繭玉作りをするのが恒例になっているので、今回は繭玉の作り方を中心にレポートします。

繭玉の材料は、米の粉とお湯、砂糖少々。砂糖は無くても作れますが、入れた方が固くなりにくく、食べやすくなる効果があります。出来上がったら、色粉でカラフルに着色するのが定番の作り方です。

米粉と砂糖を合わせた所にお湯を一気に注いで手早く混ぜます。

作りたい色の数(今回は白、赤、緑、黄色の4色)に分割して、蒸し器で蒸し上げます。

蒸しあがったら、すりこ木などでお餅のようにつきます。
娘も「お餅つきみたい!」と大喜び。

着色したら小さく分割して、丸めながら形作っていきます。
形にも、繭玉、稲穂、小判など五穀豊穣や繁栄を祈る意味があります。

しばらく乾かしてから柳の枝に刺して完成です。

夕方、繭玉を焼きに出発!寒いのでしっかり防寒して。

例年、小さいやぐらと大きいやぐら2つ作ります。
 

暗くなってきた所で点火。炎が夜空に舞い上がり、辺りがすごい迫力と熱気に包まれます。

ある程度燃えた所で、縄を引っ張ってやぐらを引き倒し、火が落ち着いてきたら繭玉を焼きます。三九郎で焼いた繭玉を食べると風邪を引かないと言われています。

火の回りで、年配の方々は、子供の時の三九郎の思い出を楽しそうに話していました。
昔は、子供主体で行われていた伝統行事も、近年の少子化で大人の負担が増えた事や、コロナ禍の影響などもあってだんだんと行われない地区も増え、縮小傾向にあります。
伝統の火は消さないように、子供にも体験する事で伝え続けていけたら良いなと思います。

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この記事のライター

奥牧双葉
奥牧双葉
長野県在住。一児の母。 製菓衛生師/只今、お菓子の企画・開発職として修業中。 これまでパティシエールとして働いてきた経験を活かし、大好きなお菓子作りや料理などを中心に、皆様に手作りの楽しさをお伝えしていきたいです。
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